IT業界のバズワード!「メタバース」をわかりやすく解説
「メタバース」という言葉を耳にする機会が多くなりました。
しかし「メタバースがどういうものなの?」「VRとは違うの?」と中身についていまいちわからない点も多いかと思います。
今回は今後さらに広がりを見せる可能性の高い「メタバース」について解説していきます。
この記事でわかること
- メタバースとは何か
- メタバースの背景
- メタバースの関連技術「ブロックチェーン」「NFT」の概要
- メタバースの課題
目次
01「メタバース」とは何か?
2021年はメタバースの年という程にメタバースという言葉が注目されるようになりました。まずはこのメタバースというものがどういうものなのか紹介します。
メタバース = メタ(meta:超)+ ユニバース(universe:宇宙)
メタバースとは、メタ(meta:超)+ ユニバース(universe:宇宙)から作られた造語になります。元となったのはSF作家のニール・スティーヴンスンが著作「スノウ・クラッシュ」の中で記述した仮想世界を指す言葉としてメタバースが登場しました。
現段階では新しい概念であるメタバースにはしっかりとした定義というものは存在していませんがメタバースの要素としては以下のようなことが挙げられます。
- インターネットを経由して共有できる3次元仮想世界空間
- ユーザーがアバターを使って社会生活または経済活動を送れる仮想世界
ただ仮想空間というだけでなく、「他者と交流できるような同じ仮想空間を共有している」「経済活動が可能な空間」という点が重要です。
メタバースの具体例
メタバースの身近な具体例としては「あつまれどうぶつの森」がよく取り上げられます。
自分のアバターを作って島を自由に作ったり釣りなどで遊んだり、友人を島に呼んだり逆に友人の島に行ったりと自分のアバターがあつまれどうぶつの森の空間の中で他の人とコミュニケーションを取ったりすることができます。
その他にも「フォートナイト」や「マインクラフト」も身近なメタバースの例として挙げられます。
02「メタバース」と「VR」の違い
仮想空間というとVRというイメージが強いと思いますがメタバースとVRには違いがあります。
メタバース=インターネット上に存在する「仮想空間」
VR=仮想空間を現実と同じように感じ取れる「デバイス」
メタバースはインターネット上に存在する「仮想空間」のことを指します。一方VRは仮想空間を現実と同じように感じ取れるデバイスのことを指します。
なのでメタバースにはVRゴーグルといった機器は必要ありません。
あつまれどうぶつの森を例にしたように仮想空間の中に自分のアバターを置いてそこで現実と同じような社会活動や交流を行うことができればそこがメタバースであり、VRはそのメタバースをより没入感を感じるようにするための技術や機器のことを指します。
メタバースは仮想空間そのもののことを言い、VRはそれを感じ取って没入感を感じるための手段のことを指す
03なぜ今メタバースが注目されているのか?
メタバースの近年の盛り上がりからここ数年で生まれたものだと思われがちですが実はもっと前からメタバースに近い形のものが存在していました。
メタバースのパイオニア「セカンドライフ」
メタバースの第一次ブームとしては「セカンドライフ」があります。
「セカンドライフ」はアメリカのLinden Labの運営により2003年にサービス開始されました。
PCを通じてアクセスできる仮想空間でアバターを通じてアクセスしボイスチャットやアバターの様々なアクションを通じてコミュニケーションが取れたり、仮想空間の中にビルを建てたりショップを開いたりイベントを催したりなど各々が自由に企画やものづくりを行なっていました。また土地や商品を売買でき、ゲーム内で通貨を稼ぐことも可能で現実の通貨に換金することもできました。
その当時の日本ではアメーバピグやmixiが流行っていてテキストベースのコミュニケーションか主流だったのでかなり先進的で現在のメタバースに近い形のものが既にできていました。
しかしながら2009年頃までにはユーザー数も減少し衰退してしまいました。
この衰退の原因としては以下のようなものが挙げられます。
- 技術インフラの未成熟によるユーザー体験低下
- 収益化による金銭トラブル・詐欺行為
今メタバースが注目されている背景
一旦衰退してしまったメタバースですがなぜ今注目されるようになったのでしょうか?
注目の背景には以下のようなものが挙げられます。
Facebook社の創設者ザッカーバーグ氏が社名をFacebookからMetaに変更し、今後はメタバース事業を主力にしていくといった方針転換をしたことが要因になったと考えられます。
そこから「メタバース」のワードが注目され各社が力を入れるようになりました。
新型コロナウイルスの流行により感染防止対策でリアルで人が集まることに制限がついたことでオンラインイベントやオンラインコミュニケーションが増加し今までとは生活様式が大きく変化していったこともメタバースが注目される大きな要因になりました。
そういった流れの中でメタバース内で働いたり、メタバース内でイベントを開くことでオンラインでもリアルに近いコミュニケーションが取れるメタバースという存在は注目されました。
5G通信技術の登場により高速通信・低遅延・大容量のデータ通信を可能にしたことや3D記述の向上やそれを処理するデバイスの処理能力もセカンドライフが流行した頃よりも格段に上がったことも挙げられます。
また新しい技術であるブロックチェーン技術とNFTにより仮想空間での経済活動の安全性を確保されたことも大きな要因になっています。
→IDCによると2021年第3四半期時点でのVRヘッドセットの出荷台数が936万台と前年比で348.4%と大幅な成長になりました。
またMeta社の「Meta Quest 2」を筆頭にGoogleがスマートグラスの発売を予定していたりAppleからも販売計画があるなど市場の動きも活発になっています。
04ビジネスツールとしてのメタバース
コロナ禍になりオンラインで仕事を行うことも多くなってきました。
ここではメタバースを活用してテレワークでもコミュニケーションをよりリアルに近い形でできるようなサービスをご紹介します。
Horizon Workrooms(Meta社)
メタバースを牽引するMeta社が提供しているサービスでバーチャル会議・バーチャルオフィスが利用できる「Horizon Workrooms」というものがあります。 現在はベータ版のため無料で使用することができます。 基本的には「Meta Quest 2」や新作の「Meta Quest Pro」といったVRゴーグルを使用することが前提となります。
- クリアでストレスの少ないコミュニケーション 「Meta Quest 2」の技術によって音声がクリアで遅延が非常に少ないため違和感なく会話が行えます。
- よりリアルに近いコミュニケーションが可能に。 Horizon Workroomsの空間オーディオ技術によって空間の方向や距離を再現しているので位置に応じて遠くの人の声は小さく、近くの人の声は大きく聞こえるのでZOOMなどのビデオ会議よりもリアルに会話をしているように感じられます。
「Meta Quest 2」のハンドトラッキング技術で、アバターの身ぶり手振りは指の一本一本まで正確な再現が可能になります。それにより身振りを認識することが可能になり - 仮想空間に自分のPCが持ち込める。 VRゴーグルのパススルー機能を用いて自分のPCを仮想空間内に持ち込むことができます。
- ホワイトボードなどのビジネスツール機能が充実 リアルタイムで書き込みが可能なホワイトボード機能やVRゴーグルのパススルー機能を用いて自分のPCを仮想空間内に持ち込むことができます。
- さらに大型アップデートにより機能が追加されていくことが発表されています。公開されているものでは今までは1枚しかモニターを仮想空間内に設置できなかったのですが今後は最大3枚まで設置が可能になる、「Zoom」を使ってWorkroomsミーティングへ参加できるようになるといったものになります。
- 仮想空間に持ち込めるキーボードは少ない(順次対応予定) 現在対応しているものが「Apple Magic Keyboard、Logitech K830、13インチMacBook Pro (2016-2020)、15インチMacBook Pro、16インチMacBook Pro」になります。
05メタバースと関連技術
メタバースの重要な要素のひとつとして経済活動が可能な空間であることが挙げられます。セカンドライフの流行の際にはこの点でのトラブルが衰退の一因となりました。
メタバース内での経済活動においては新しく出てきた技術である「ブロックチェーン技術」と「NFT」は今日のメタバースを語る点では欠かせない存在です。
これまでのメタバースではメタバース内のアイテムは、コピーが容易にできてしまったり、サービスが終了してしまえば手元に残らなかったりとデメリットがありました。
しかしブロックチェーン・NFTの登場によりそれらのデメリットが解決されました。
ブロックチェーン技術を使用したNFTによりコピー不可かつデジタルコンテンツの所有権の証明が可能なため、コピーなどの不正の防止が可能になりデジタルコンテンツがより扱いやすくなりました。それによってメタバース内でNFTを売買することで安全に経済活動が可能になったのです。
ブロックチェーン
先ほどから挙がっている「ブロックチェーン」について説明していきましょう。
ブロックチェーンとは情報を記録するデータベース技術の一種でブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖(チェーン)のように連結してデータを保管する技術です。 ビットコイン等の暗号資産はこの技術が基盤となっています。
各ブロックには以前のブロックの内容のダイジェスト(ハッシュ値)が記録されています。
過去の取引を改竄しようとすると以降のブロックのハッシュ値と整合性が取れなくなるため、不正を発見することが可能になります。
またブロックチェーンの特徴としては分散型台帳システムを用いていることが挙げられます。
従来は1箇所に集中して管理する中央集権的な管理方法でした。例えば銀行は取引など口座の情報を記録管理しており、利用する人はその口座情報を信用しているため中央集権型と言えます。
一方分散型台帳システムとは特定の場所で一括管理をするのではなく、不特定多数のブロックチェーンネットワーク参加者によって共同管理されるようになります。
メリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 特定の管理者を持たないため特定の政府や企業に情報を握られることがない
- 一括管理されないためサーバダウンのリスクも分散できるためシステムが止まらずに動き続ける「ゼロダウンタイム」が可能となる
NFT
NFTとはNon Fungible Tokenの略で非代替性トークンという意味でわかりやすく言うと「替えの効かない唯一無二のデータ」と言うことになります。
改ざんに強いブロックチェーンの技術を用いてデジタルコンテンツなどにNFTのデータを紐づけることで、世界で一つしかないものであると証明することができるようになります。
セカンドライフの衰退の原因にもなった偽物などの詐欺を防ぐことができデジタルコンテンツの資産性を確保できるようになります。
NFTの取引の仕組み
NFTの取引はNFTマーケットプレイスと呼ばれるNFTを売買できるプラットフォームで行われます。
流れについては下の図のようになります。
- ①画像・動画・電子書籍といったデジタルコンテンツの著作権を持っている会社やアーティストはNFTを発行します
- ②著作権保持者はNFTを販売し、ユーザーと著作権保持者との取引でユーザーは所有権を購入
- ③NFT市場ではユーザー間でのNFTの売買・譲渡が可能でユーザー間同士による所有権の売買
- ④著作権保持者に手数料として仮想通貨が支払われる(プラットフォームによって対応してないものもあり)
こうしたNFTは作品を作るクリエイターにもメリットがあります。
従来では二時流通の際はクリエイターには還元されることはありませんでした。
しかしNFTを紐付けている作品はブロックチェーン上で取引が行われるため履歴が残り改竄もされにくいため2次流通の動向を追うことが可能となります。
2次流通の売り上げがクリエイターにも還元されるという点はNFTのメリットと言えるでしょう。
06メタバースの課題
私たちの生活に新しい景色を見せてくれるメタバースですが、以下のような課題もあります。
- 仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの問題
→メタバース空間でのトラブルに対しては方の整備が追いついていない状況です。
現実では問題のないビジネスであっても、メタバース上で行うと法的問題を生じる場合があります。
またメタバース空間では複数の国を跨ぐことが想定されるため「国際私法(国際結婚や貿易取引など複数の国にまたがる私人間の法律)」の問題も起こる可能性は高いです。 - 導入に必要なコストと快適さ
→コスト面での負担は課題の要因になります。VRゴーグルの「Meta Quest 2」は現在だと値上がりしたため一番スペックが低いもので59,400円します。
より快適にしようと最新の「Meta Quest Pro」にすると226,800円もかかります。
VRゴーグルを使用せずに利用できるサービスもありますがメタバースの特徴の没入感を感じるためには必須だと思いますので、敷居の高さは課題になると思われます。
また快適さにも課題はあります。VRゴーグルの駆動時間が現状2時間ほどしかなく、VRゴーグルの重量もそれなりにあるため長時間装着は負荷が大きく不快感を感じる可能性が高いです。
VRゴーグルだけでなく3Dの処理を快適に行えるようなある程度のPCスペックも要求されます。
ソーシャルVRアプリの「VRchat」を例に挙げると必要なスペックはCPU:Core i5-9600K、 GPU:GTX 1060 (3GB)・Radeon RX 590、メモリ:16GB程になります。
仮想空間内でのやりとりも通信速度によってラグが生じてしまいます。こうした準備はこれから始めるユーザーにとっては一歩踏み出しづらい要因かと思われます。 - 一過性のブームで終わってしまう可能性もある
→ブロックチェーンやNFTが台頭しWeb3.0時代が本格化したともいわれているが、無名のアーティストのデジタルアートが75億円でNFT市場で落札されるなどバブル的な側面も強いため今後の動向を追って吟味する必要があると思われます。
06まとめ
メタバースや関連する技術について説明してきました。
メタバースやそれを取り巻く技術の発展をざっくりとでも理解して頂けたでしょうか?
本記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
インターネットを経由して共有できる3次元仮想世界空間、またユーザーがアバターを使って社会生活を送れる仮想世界
- Facebook社によるMetaに社名変更
- ブロックチェーン・NFT・仮想通貨などの技術の発展
- コロナ禍によるオンラインイベントやオンラインコミュニケーションの需要
情報を記録するデータベース技術の一種、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖のように連結してデータを保管する技術。分散管理型で改竄しにくい特徴がある。
ブロックチェーンの技術を用いてデジタルコンテンツなどにデータを紐づけることで、世界で一つしかないものであると証明することができるデジタル証明書。2次流通の際にクリエイターに利益が還元されるメリットがある。
- メタバース空間内でのトラブルに対する法整備が追いついていない。国際私法の問題も懸念される。
- VRゴーグルのコスト面での負担の高さと装着感や駆動時間の快適性の低さ。PCスペックや通信速度にある程度のレベルが要求される。
あとがき
メタバースの発展により私たちの今後の生活が豊かになると予想されます。
技術の発展は目まぐるしくGoogleやAppleなど各社がスマートグラスの販売を予定するなどより身近にメタバースを感じるようになる日がすぐそこまで来ているように感じます。
セカンドライフの時のような一過性のブームで終わってしまう可能性も危惧されますが、今後の発展に期待をしたいと思います。